オシャレな人はパクチーばかりいつも食べている

パクチー食べません。コメントください。

さようならポポラマーマ

 ポポラマーマというパスタチェーンがある。いや、あった、と言おうか。比較的低価格で本格的なパスタを食べることができる生パスタのお店、だった。と言っても、ポポラマーマというチェーンはまだ世の中に存在しているし、訪ねて食事をすることはできる。だから、本来は過去形で表現するべきではないのだが、それでも、あえて、過去の存在としてこのブログではポポラマーマを取り扱いたい。

 かつて、豊洲にあるホームセンター、スーパービバホームの2階のショッピングモールにもポポラマーマの店舗があって、ビバホームに買い物に行ったついでに、ちょいちょい立ち寄って食べていた。なのだが、2017年の10月に豊洲店が閉店してしまい、それがポポラマーマで食べた俺の最後の記憶だった。

 ポポラマーマは思い出深い店だ。いつの頃から、自覚的にポポラマーマで食事をするようになったのかは思い出せないが、お互い20代の後半になって、中学の同級生だったO脇くんとちょいちょい会うようになってから、よく行くようになった気がする。いつぞやなど、相模原の方のポポラマーマまで食べに行ったことさえあった。失礼な呼び方だが、ポポラマーマに行くことを、O脇くんと僕は、バカパスタと呼んでいた。バカパスタしようぜ、と言ってポポラマーマに行くのだった。バカなのはポポラマーマではなくて、もちろん僕たちだ。なぜバカなのかといえば、ひとり二皿のパスタをオーダーするのがデフォルトだったからだ。2名客として席に案内され、4皿のパスタを注文する。オーダーを受けた店員さんは、どういうことなのかよくわからない、という顔をしながら、同時に4皿をお持ちしてよろしいのでしょうか、などと訊いてくる。僕も、O脇くんも、一人2皿は当たり前に平らげそうだというような大食漢、には見えない出で立ちだし、店員さんはまさかそういう注文が来るとは思っていなかった、というような顔でオーダーを復唱する。なぜ2皿なのかといえば、大盛りにするよりも2皿頼んだほうがトータルでの幸福度が高いから、という理由からだった。ポポラマーマにはLサイズという設定もあって、いくらか支払う金額を増やせば料理を大盛りにすることができるのだが、それだったら別の味付けも楽しみたいし、少し増やすくらいならそんなに金額も変わらないから量を2倍にしてもらいたいし、というような気持ちから、別の味付けを2皿頼むほうが幸せだ、と考えていた。俺の定番のメニューは、『ほうれん草ベーコンクリーム』だった。ほとんど必ずオーダーした。シンプルなホワイトソースのクリームパスタに、ベーコンとサラダほうれん草が乗っているだけの簡素なメニューだが、ポポラマーマの持ち味であるモチモチとした生パスタが活きる、素晴らしいメニューだった。だが、このメニューはポポラマーマには、もう今は存在しない。それから、もうひとつのオーダーは、大抵は醤油系のパスタを選んでいた。こちらも極めてシンプルな、『水菜のペペロンチーノしょうゆ』をオーダーすることが多かった。ほうれん草ベーコンクリームは約600円、水菜のペペロンチーノしょうゆは約400円。これがかつてのポポラマーマの価格だ。税率の変化に伴う価格改定などもあったが、2皿頼んで税抜きで1000円くらい、という良心的な価格設定の店だった。

 そんなポポラマーマも、いまでは、一番安いメニューで内税で490円だし、かつては税込で600円くらいだったカルボナーラもいまは内税690円だ。100円とか200円とかの差ではあるが、それでも、バカパスタ、なんて言ってたらふく食べたいと思っているような人間からしたら、大きな差だ。だが、値上げ自体はちょこちょこ繰り返していたわけだし、べつにそれが俺の中でポポラマーマという存在が過去形になった直接の理由ではない。

 きのう、2年ぶりくらいにポポラマーマに足を運んだのだが、出てきたパスタを食べて、心から美味しいと思うことができなかったのだ。どういうふうに味がかわったのか、その明確な変化はわからないが、もちもちしているのにしっかり歯ごたえのある生パスタの良さとか、シンプルな味付けのソースとか、そういうポポラマーマらしい良さを全く感じることができなかった。なにより、大好きだったほうれん草ベーコンクリームがメニューから消えてしまったことが悲しくてたまらない。O脇くんともずいぶんと会っていない。かつてポポラマーマはスイカしか使えなかったが、いまではクレジットカードやその他のポストペイの電子マネーも使えるようになっていた。スイカしか使えないままでかまわないから、あの頃のメニューで、あの頃の味の、あの頃のポポラマーマにまた行ってみたいと、クイックペイで支払いを済ませてからポポラマーマ旗の台店をあとにした。豊洲店で食べていた頃、いつも関心していたのが、提供される料理の安定感だった。バイトを雇って運営している店なのは当たり前だとして、提供される料理にブレを感じることが殆どなかった。いつも熱々で、くっきりと輪郭がはっきりとしたパスタを食べることができていた。豊洲店がたまたま良くて、旗の台店がだめだったのかどうかはわからないし、もう豊洲店は無いから確かめることもできない。

 さようならポポラマーマ、さようなら、ほうれん草ベーコンクリーム。

 f:id:usagienu:20190421233731j:plain この画像は、最後に食べたほうれん草ベーコンクリーム。豊洲店が閉店する直前に食べに行ったときのもの。このときは一人だったし、確かあんまりお腹が空いていなかったので、一皿しか頼まなかった。写真を見ると、ちょっとほうれん草のコンディションがよろしくないが、透明感のある生パスタと、シンプルで美味しいクリームソースで、満たされた記憶がある。化学調味料の味に敏感になってからの訪問だったが、化学調味料を特別に感じるような味付けではなかったと記憶している。化学調味料が入っていたとしても、べつに気にならない、そんなような美味しさだった。